モロッコの世界遺産の特徴は、何かひとつの建物というのではなく、人びとが生活を続ける街そのものが世界遺産指定をされているということです。
ファズ・エル・バリの世界最大のメディナ(旧市街)の町並み、マラケッシュのメディナ、古都メクネス、ヴォルビリス、ティトゥアンのメディナ、エッサウッィラのメディナ、アル・ジャディーダのポリトガル都市、そしてベルベル人たちのカスパであるアイト・ベン・ハドゥです。
アイト・ベン・ハドゥ
7世紀にアラブ人による支配をのがれたベルベル人は、アトラス山脈を越えて、オアシスにカスバを築きました。カスバというのは、城砦の意です。
アイト・ベン・ハドゥというのは、現在「カスバ街道」と呼ばれるエリアで、ワルザザード近郊西に33キロメートルに位置してます。カスバ化した村「クサル」の典型的な例といえるでしょう。
映画の『アラビアのロレンス』や『シェルタリング・スカイ』で実際にロケ地となったのが、このアイト・ベン・ハドゥです。
日干し煉瓦に乾燥した埃のけむる光景は、殺伐とし、人を寄せ付けない厳しさと迫力を見せています。特別な歴史があるわけではありません。むしろ、人の手であれこれと加工されていない、不思議な、現実離れした空間の広がりこそがここのここたるゆえんかもしれません。
しかしそれでも人は住みます。小川のほとりの丘の斜面を利用して建てられた「村」には、巨大な門が構えられ、高い城壁が張り巡らされています。
それでもここには現在もベルベル人の家族が5~6家族住んでいます。カスバ街道には、他にも幾つか同様の村が存在しますが、ここアイト・ベン・ハドゥの保存状態は格段に良いといえるでしょう。
来るものは拒む!まさにそう言っているかのようです。ここはやはり、難攻不落の要塞なのです。